第14話 6月30日放送

「父と子」

 29歳の頃、父の会社を突然飛び出しました。 理由は、よくある親子の考えの違いってやつです。 でも、子供の僕が「わがまま」だけで、ぶつかった訳じゃありません。 とにかく却下、却下の毎日で、クズのような扱いにキレたのです。 父の絶対的な権力の下で、僕は後を継ぐ理由が分からなくなっていたのです。
 いざ飛び出したものの、次の仕事と言っても、何をしたらいいのか分からない。 結局は何も出来ないんだと痛感しました。 あまりにも自分の不甲斐無さに、自己嫌悪に落ちては酒を飲み、 仲間達には「俺は間違っていない」と、逆ギレ言ったりして、 長男として、社会人として、子を持つ親として、さまざまなプレッシャーの中、 心は揺れ動いていました。
 ある日、小さな息子と手をつなぎ、川沿いの道をとぼとぼと歩いていました。 まだ2歳の息子に
「バカなお父さんに何が出来ると思う?」
「何かないかなぁ、お父さんに出来る事って?」
と、つぶやいていました。 しばらくしたら、息子が
「おうち帰ったら、アンパンマン描いて」
と言いました。
「そうだ!子供の頃、漫画家になりたかったんだ」
「俺は似顔絵を描いて笑わせていた」
と、思い出させてくれました。 20代には、すっかり忘れていた事でした。 って言うより自ら封印していたのかもしれません。 父から見放され、息子から答えを教わりました。

続きは、また来週です。