第16話 7月14日放送

「水を得た魚」

 30歳で似顔絵を展示した僕ですが、気持ちは少年のようでした。 自分が描いた絵が飾られている、たくさんの人が見に来てくれる。 しかも新聞にまで紹介されてしまって、 近所のおじさんおばさんたちは、僕が突然似顔絵なんか描いたもんだから、
「絵の学校に行ってたの?」
「よく特徴つかんでいるよ」
 なんて声かけてもらい、
「まったくの我流だよ」
 ってこたえると、
「へ~、あんたのご両親は絵とか芸術に縁がないはずらよね」
「人間、何か得意なものがあるって言うけどさぁ・・・わかんねぇもんだねぇ」
 なんて、地元ならではの会話に花が咲いたりして、面白かったのが、遠い親戚が現れたり、 急に大根や枝豆をいただくようになりました。
 「鈑金屋のせがれ」から「似顔絵のやまださん」と呼ばれ方も変わりました。 「今度、私の似顔絵を描いて下さい」
「次はウチで似顔絵を展示してもらえませんか?」
などと、人から頼まれるなんて大人になってから全く無かった事だから、 嬉しくてたまりませんでした。
 もう迷うことはありません、似顔絵を人生のライフワークにしようと決めました。 小さい頃、漫画家になりたいと夢見て、10代に辛い体験と挫折。 20代は、社会的にとか、長男だからとか、世間ていとかを気にしすぎて、 自分を見失っていましたが、30代でようやく、生きがいを見つけることが出来ました。 似顔絵をもっと上手くなりたい。絵が上手いと言われたい。もっと人を笑わせたい。 大人になっても、想いは子供の頃の夢、そのままです

続きは、また来週です。