第29話 10月13日放送
「昭和」
先日、母の実家に遊びに行きました。僕が小学2年まで育った家です。
学校から帰って来ると、いつも囲炉裏を囲んで座っていた爺ちゃん婆ちゃんは、
今はもういません。それまで7人が生活していた家も、
時代の流れと僕らの成長で、おばちゃん一人になっています。
茶の間に入ると、なにげなく部屋に置かれていたこの家のアルバムを見つけました。
若き日の爺ちゃんと婆ちゃんと、その子供たち。
昭和初期の風景が、いっぱい写っていました。
白新線が開通した時の写真や、小さな子供を抱いている写真。
祭りや、仕事場での仲間たちと一緒の写真などなど、
明治・大正・昭和と生きてきた爺ちゃん婆ちゃんの息づかいを感じました。
もう一冊の薄っぺらな黒いアルバムがあったので、それも手にして開いて見たら、
はっ!と胸が詰まる写真がいっぱいありました。
爺ちゃんがこれから戦地に向うという写真でした。
爺ちゃんの他にも2人の兵隊さんがいて、3人の名前の入った大きなノボリが後にあり、
町中の人たちが集まって出陣式をやっているものでした。
他にも鉄砲を持った写真や、もしもの時に家族に残す為の顔写真。
一緒に戦地に向う友の写真などがありました。
頭の中で、爺ちゃんは戦争を体験した人だとは知っていたけど、
写真の爺ちゃんはこの時、命を捨てる覚悟で人を殺しに行こうとしてたんだ。
これが戦争で、これが爺ちゃんなんだ。爺ちゃんは人を殺す訓練を受けていたんだ。
戦争の悲惨さを歴史や情報で知ることよりも、僕にも流れている爺ちゃんの血が、
ブルブルとおびえ、背筋が凍る思いがしました。
子供の頃、爺ちゃんといえば、いつもニコニコして優しい顔だとしか知らなかったので、
あの笑顔の奥には、平和の喜びを孫の僕に見せてくれていたんだと、そう思います。
続きは、また来週です。