第31話 10月27日放送

「似顔絵と肖像画」

 同じ人の顔を描くにしても、似顔絵と肖像画は違うものだと考えてもらいたいです。 人の顔は変わるのです。一年一年変化して行きます。 髪型、シワ、太ったとか痩せたとか。とにかく変わっているのです。 そう判断すると、その日、その時の顔を写真で撮ったようにそっくりに描くのが 肖像画になります。
 例えば、学校の音楽室に、ベートーベンやモーツァルトなどの顔の絵がありますよね。 その他にも、ちょっと前ですが、映画のポスターや看板に スターたちのリアルで躍動感も感じられるほどそっくりな絵が飾られていました。 これらは肖像画です。
 それに対して似顔絵は、その日、その時の顔をそっくりに描くのではなくて、 その人の雰囲気とかイメージを意識して、2・3年経っても似ているように描くのを言います。 モデルの顔の向こう側、心の部分を表現できると、それだけで似ているとなります。 まさにブラックユーモアが、そこにあります。
 僕が勝手に思っている事なのですが、 きっと「へのへのもへじ」は日本の似顔絵の原点です。 それと、写楽の浮世絵も似顔絵だと思います。 当時の有名な役者を、けったいな顔と手振りを表現して笑わせようとしたのだと思います。 ただその時代は、ブラックアングルの面白さはなかったから、 写楽の絵は大衆ウケしないで、短い期間しか作品がなかったのだと思います。 似顔絵はこのように、デフォルメの楽しさもあるのですが、 反発も食らう怖さも秘めています。
 僕は似顔絵と出会い、似顔絵をライフワークにしています。 毎日変わる顔を、どう僕の方で料理するか。つまり、似せようと描くのではなくて、 どう相手を自分に引き寄せて、最後は手玉に取るという作業が好きなのです。
 その日その時の人を描くのが肖像画、デフォルメが出来るのが似顔絵。 まだまだ似顔絵について、もっと説明しなきゃいけません。

続きは、また来週です。