第49話 3月1日放送分

「心の時代」

 本業は自動車の鈑金塗装工場のせがれなんだけど、似顔絵も仕事としているので、 どっちが本業なの?って、よく聞かれます。 で、どっちも僕の仕事ですって答えています。 このご時世、二つの営業をしている店は、たくさんあります。 もはや、中小企業は当り前のようになっています。
 「二頭追うものは一頭も得ず」って言葉がありますが、確かにそうだと思います。 でも、二足のわらじを履かなきゃいけないほどの厳しい現状です 時代は変わったと言っていいでしょう。
 先代たちが築いてくれた社会は、僕らに物が手に入る豊さを与えてくれました。 ところが、心まで豊かには出来なかったようです。 平成になってからの長引く不況で、家庭の財布は緩むことはありません。 自動車関係の仕事をしていますが、15年ほど前までは、車は財産だったのに、 今は、動けばいいというふうに変わってしまいました。
 車だけに限らず、物自体がそんなに欲しくなくなっているんですから。 全部じゃないですよ。で、今何が求められているかっていうと、 どうやら、人の暖かさとか、愛とか、ぬくもりとか、心のような気がします。 車を直すのも、似顔絵を描くのも、どちらも技術のいる仕事なんで好きなんです。
 ただ残念なのが、車は物なんです。 時が過ぎれば、いらなくなって、また別な車に替えることが出来る品物なんです。 つまり、技術を使って治しても、お客さんは以前よりも喜ばなくなってしまいました。 同時に僕ら技術者の「はりあい」も薄れていってます。僕は、そう感じるんです。 で、似顔絵は?っていうと、まだまだですが笑ってもらってます。 時代の変化ってやつを、肌で感じている毎日です。

続きは、また来週です。