第51話 3月15日放送分

「太陽くん」

 2月29日、デッキ-401の席描きで、こんなご家族と出逢いました。
 二人の娘さんのいる僕と同じくらいのご夫婦が、 「無理なお願いですが聞いてもらえませんか?」って言うんです。
 奥さんには笑顔が無く、旦那さんが声をかけてくれました。
「この写真の子を描いて欲しいんですが・・・」
 見せてもらったのが、紫色にどす黒い唇をした眠っている赤ちゃんの写真でした。 なんと、生後たった二ヶ月で無くなった赤ちゃんの写真でした。 2月14日に他界したそうで、名前は太陽くんと教えてもらいました。
 「この子の写真は、これしか無いんです。仏壇に飾るには・・・どうか、この子の似顔絵を・・・」
 僕は息をのみました。 「お願いできますか?」って言う奥さんは、 すっかり涙を枯らしてしまったような悲しい表情でした。 「わかりました」と、太陽くんの一枚しかない姿の写真をお預かりして、 1週間時間をもらいました。
 僕は、太陽くんが寂しくならないように毎日ポケットにしまいこんで過ごしました。 目を閉じた顔を、生きていた間はどんな瞳なんだろうって頭に浮かぶのを待ちました。 そして無心に描きました。
 1週間後、そのご家族と再会して、僕が描いた太陽くんの似顔絵を渡しました。 太陽くんだと納得してくれるかどうか、えらいドキドキしましたが、 渡した絵を見て、ご両親は初めて笑顔を見せてくれました。 「この絵を仏壇に飾ります」と言ってくれました。 良かった。
 太陽くん、君と出逢えて嬉しかったよ。 命の尊さと、家族の愛を教えてくれてありがとう。 君と僕は、もう友だちだよ。

続きは、また来週です。